ご利用者の声

当社のクライアントである、防災設計に関するコンサルティング業務などを行う株式会社ラグロフ設計工房様。そして、当社のビジネスパートナーであり、CADスタッフ育成のスペシャリストの株式会社デバイスワークス様。今回は両社に自社事業や、当社サービス「ミャンマーCAD工房」利用のきっかけなどを伺いました。

左)株式会社デバイスワークス:加賀屋 太郎様 右)株式会社ラグロフ設計工房:金重 稔様

1.創業のきっかけについて教えてください

株式会社ラグロフ設計工房:金重様

社会貢献度が高いが多くは知られていない防災設計という仕事

私は会社員時代、河川の設計を担当していました。河川や道路に設計が必要ということ自体あまり知られていませんが、建設コンサルタント業界は、今年(2020年)7月の九州豪雨のような災害時に、いわゆる新型コロナの医療従事者のような復旧や復興が待ったなしの状況になります。
的確に地形や災害現象を読み、復旧や復興ができると感謝され、かつ、社会的貢献度が高いところがやりがいとなって、今もライフワークとなっています。

雲仙普賢岳の噴火を機に、防災分野へ興味を抱く

起業のきっかけとなる出来事は、大学時代までさかのぼります。1991年、長崎県の雲仙普賢岳(ふげんだけ)が噴火し、大学の先生に付いて同行する機会がありました。現地でラジコンを飛ばし撮影などをしたのですが、その経験から防災に興味を持ち、防災関係の仕事につくことを希望しました。しかし、今では当たり前になりましたが、当時、防災事業部や防災技術部がある会社は、大手企業しかありませんでした。
その後は河川関係の会社に入社し、土石流を扱う仕事をしていました。しかし社内で経験のある人が少なく、私は国交省に直接問い合わせ対応していました。仕事をしているなかで、災害が増えているこの分野なら独立してもやっていけると思ったのが起業のきっかけです。

ITを駆使して、業界の人をもっと幸せにしたい

会社を退職した1999年頃、AutoCADが世の中に出てきました。当時はまだ誰もCADを使っていない時代です。これから仕事でパソコンを使うようになればもう少し楽になって、みんなが幸せになれるんじゃないかと思いました。
独立後しばらくは個人事業でしたが平成21年に法人化し、今年で12年目を迎えます。法人化したところは「土木版BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)」という3次元の概念が少し出始めたときで、「これで若い人にも魅力ある会社にできる」と、人を雇ってやっていけると思いました。
ちなみにラグロフという社名は、「笑う門には福来たる」ということわざの英語訳、「Laugh and grow fat」から取っています。それぞれの頭文字をつなげて誕生したのが「ラグロフ」なんです。

株式会社デバイスワークス:加賀屋様

創業以前は「何でも屋」。後にIT変革期に3Dを担当

土木の大学を卒業後、土木の設計会社で5年勤めていました。一時期は、全く違う業界の雑貨屋さんで働いていたこともあります。しかし、技術を売りにしないと給料が高くならないと感じ、土木業界に戻って5年間会社勤めをしました。
2000年頃の土木業界はITの変革期といえました。とはいえ、小さい会社だったこともあり営業も技術もやり、新しいことにいろいろとチャレンジしました。また、その会社の新事業として、3Dを一人でコツコツ始めました。その時はメーカーの人に教わりながら様々な3Dソフトを勉強しました。

「効率化」という得意分野の事業化

CADをメインにした作業というのは世の中にたくさんあります。ただ、私は人より速くとか、工夫していろいろやってみることを得意分野としていました。普通なら一つのソフトしか使わないところを、私は複数のソフトを使うことで効率を上げていました。このように自分自身が効率良くやるためにやってきたことを、商売にできるのではないかと考え始めたのが起業のきっかけです。

アイデアを形にする夢を叶えるため独立

当時の私はアイデアがどんどん出てくるタイプで、そのアイデアを形にするのが夢でした。しかし、勤めていた会社では予算が出ませんでした。そこで、独立すれば自分の好きなことを実現できるし、好きなアプリを作ることなども可能だと思い、退職することにしました。
とはいえ、独立直後は苦しく、どんな仕事でも受けていました。単純なエクセル入力やCAD入力など、ご飯を食べるために必死でしたね。一方で新しい技術にチャレンジして新しい商品を作りたい、という思いは強くもっていました。

「建設業のITを外の業界に、外の業界のITを建設業に」

会社員時代に任せられていたITは、これから伸びるだろうと感じていました。なぜなら、建設業ではGPSやセンサーなどのIT技術を、他業界よりもいち早く導入していたからです。ドローンもその一つです。このような建設業のITを外の業界に、外の業界のITを建設業に入れることを目標としていました。

社名に込めた想いは「1つ工夫する」

デバイスワークスは今年で15期目になります。名刺の社名の下に「1つ工夫する」と書いています。デバイスワークスという社名は、装置としての「デバイス=Device」と、工夫するという意味の「デバイス=Devise」の意味合いがあります。創業から現在に至るまで、1つ何か最先端の技術を使って工夫をしよう、という想いでやっています。

2.昔の建設業界についてお聞かせください

すべてがアナログだった建設業界

金重様:昔はコンピューターではなく、とにかく手で書いていましたね。紙に書いたものをアンモニアに付けてコピーをして(青焼き)、その上から写真を現像して貼るといった具合です。図面の計画案なら、コンクリートは黄色、土は緑など、指定された色を、色鉛筆で塗っていました。昔はワープロもないので、手で書いて、青焼きして、間違えたら削って…とすべて手作業でした。
さらに、「たくさん仕事を持っていて大変だ」と言っている人や、寝ずにやっている人が評価されるような業界でした。
それをなんとか変えたい。そして、土木関係出身でなくてもできることをITでやりたいという思いを持ちながら私は働いていました。

画期的だったAutoCADの登場。しかし苦労も

加賀屋様:AutoCADの登場は画期的でしたね。MS-DOSからWindowsに変わった時代です。MS-DOSでは線を書くのがやっとで、その裏に画像データを貼ることはできませんでした。それが、AutoCADが登場してからは画像の添付、手書きの清書、自由な配置変更などが可能になり、作業が楽になったのを覚えています。
金重様:ただ、CADで作成してプリントしたものをお客さん先へ持っていくと、なんで印刷してきているんだ?と言われたこともありました。手書きでなら5万円、CADで作ったら2万円、と言われたこともあります。
加賀屋様:コンピューターだと自動で速くやれるから、そのぶん安いと思われていた時代がありましたね。データの活用ができること自体が革新的だったんですけどね。
金重様:資格もない当時の日給は、約1万6千円でした。そのころ出始めたCADオペレーターの日給が2万5千円くらい。言われたものを書くほうが楽だし、CADオペレーターになろうかなと思ったくらいです(笑)。こちらは速く、企画を考えて書いていたんですが…。そんな時代がありつつも、CADとの出会いで独立し、次に3Dとの出会いで社員を雇うというふうに、10年単位で変わってきました。
当社とデバイスワークスさんに共通するのは、なにか工夫する、そしてITの力を利用する。という点だと感じています。来るものを何でもがむしゃらにやってきたというところも、デバイスワークスさんと共通していて嬉しく思います。

3.3社の出会い

加賀屋様:金重社長とは10年ほど前、3Dの勉強会で知り合いました。(ノシクミの)鳥養さんとは知人から紹介されて、ということになりますね。
金重様:実は加賀屋社長とはその勉強会以降は、特にこれといったやりとりはしておらず、7〜8年ぶりに連絡をとったんです。私が普段いる岡山のような地方では情報がなかなか入らないため、多くの情報が集まる東京で事務所を探していたところ、加賀屋社長が声をかけてくれました。
また、当時は新卒採用も大手参入によって難しくなってきていました。そんな時に加賀屋社長が海外に人材を見に行くと言っていて、一緒に行くことになりました。すると、現地では朝出した求人に夕方までに120名ほどの応募がある状態で、驚きでした。

鳥養様:一日でものすごい数の応募が来たものの、当然ながらすべてが私たちの採用条件に合う人材ではありません。数名に絞るために徹夜で書類選考し、翌朝その数名に電話してすぐにでも面接をしたいと伝えるといった、慌ただしいなかでの選考でしたね。

4.設計コンサルタントの仕事範囲について教えてください

道路・上下水・山川・海岸など多岐にわたる災害設計

金重様:日本は道路が多いので、道路の設計をやる方が多いですね。あと多いのは、上下水です。
当社は、土砂災害と水害を得意としています。例えば、堤防は土で作りますが、水が溢れると流されてしまいます。コンクリートで作ると高額になってしまうので、土を使用します。そのため、どんな雨が来ても溢れないように設計します。観測データや地盤特性などさまざまな特徴を把握し、ものごとを決定しています。

水の流れづくりも設計範囲

金重様:例えば新国立競技場の場合、土木がやることは建物の土台つくりです。土台が建物より堅固でその他、雨の日に水はけを良くするため地下にパイプを入れたり、水が流れるよう勾配をつけたり、外回りに水が流れるようにします。
加賀屋様:最近ゲリラ豪雨などが災害につながりますが、降った雨をどの処理場に流すかが決まっています。設計をしないと処理場までの間に水が溜まったりしてしまいますので、全ての道路、宅地に関してどの方向に流すか決める必要があります。実は新しい街や施設ができる度に設計しているのです。
金重様:水は人間にとって大事なものですが、不要なときには危険にもなります。例えば、県や街の境は、山の尾根か川の左右です。どちらかを守ればどちらかが溢れるので、不平不満が出ないよう川の真ん中が県境になっていることが多いんですね。このように、現状を把握しつつ、どのようなことがあっても川の水の量が変わらないように設計する必要があります。
このように地味ではあるが重要なところが面白いところです。表に知られることはなかなか無いですが、社会貢献性の高い仕事だと感じます。
加賀屋様:土木をやっている人は、自分の仕事に誇りを持っていると思います。

主な取引先は自治体

金重様:私たちの仕事の多くは、自治体や官公庁から発注を受けるかたちです。具体的な仕事相手は、その土地の管理者です。道路でいえば、国道なら国、県道なら県となります。また、私たちは設計したものを直接、建築のように建築・施工・管理までやることはありません。私たちは設計調査をして、官公庁に返して、そのもとでゼネコンが作る流れです。
加賀屋様:私たちの仕事は「設計コンサルタント」という言い方をします。設計と施工、建築と土木が分かれているのは、実は日本だけです。海外では一つの会社が手がけていますね。

同業他社は建築に比べて少ない

金重様:設計コンサルタントと呼ばれる同業他社は少なく、例えば岡山県全体では50社くらいです。これ以上減ってしまうと、大きな災害時に助けてあげられなくなってしまいます。そのような中で、今(2020年7月上旬)起きている災害の工事発注だけは12月までには終わらせないといけないので、これから眠れない日々が続くことになると思います。また、仕事上欠かせないので、避難しているところを見に行くことも多々あります。
加賀屋様:どのように直すかを計画するところから始まるのが、設計コンサルタントの仕事になります。ミャンマーも、これから街が発展する中で、土木技術が必要になると思います。
金重様:地図やインフラは国の財産で、栄えるためには必要なものと思います。今後、そのあたりにも関われたらいいなと思います。

5.近況についてお聞かせください

ミャンマーとの時差を勘案する必要性

加賀屋様:私たちの仕事は資格を必要としません。CADが使えること、あとはパソコンが好きだとか、いろいろなソフトを使ってみたい人とか多様ですね。当社の建築出身の社員は全体の半分くらいです。土木関連の学部や会社に関わってきていない人もいます。そのため、好きだったら誰でもできる仕事かもしれません。
ミャンマーのスタッフとのやりとりも順調ですが、苦労している点をあげるとすると、2時間半の時差があることです。例えば現地の仕事が18時までだと、日本で20時半まで見る必要があります。そのため、日本の労務上、質問を受けるのは日本の勤務時間までにするなどで対応しています。また、現地は祝日でも日本は平日で稼働していること。また、その逆のこともありますね。

非常勤講師をする上で大事にしていること

加賀屋様:私は、専門学校は2007年頃から、大学は2012年頃から教えています。講師の仕事を始めたきっかけは、CALS/EC(電子化の標準化)を普及するセミナーで全国行脚していたときに、お誘いを受けたことです。当時は生徒に手書きで教えていたようで、新しくCADを教えられる人として私に講師の話がきました。講義ではCADの基本的な操作を教えています。ただ、今後は3Dの作図もやらなくてはならないので、両方をバランスよく教えています。
講師をする上で、社会に入っても通用する力をつけることを考えて講義することを大切にしています。製図で言うと、全体像を把握して、どの手順で書けば効率化が図れるか、常に考えながら作業していくことが大切です。ただの作業者になってはいけないと思います。目的を把握して概略を組み立ててから詳細に、と考えることは、どんな作業にも必要なことです。
金重様:私は大学で、川のことをかいつまんで教えています。半分、物理を織り交ぜながら話しています。少しでも水の仕組みを分かってもらえたらいいなと思います。

6.海外人材の採用を決めた理由をお聞かせください

海外の人材は意欲が高い

加賀屋様:海外に目を向けたきっかけは、教える学校に通っていた留学生の子たちの勉強意欲の高さに触れたことです。彼らは貪欲に学ぼうとしていて、私にどんどん質問してきました。そういった姿を見て、彼らは本当に教わりたいという気持ちで日本に来ているのだ、と感じました。
5年前に教え子の住むラオスに行ったのですが、そこは古い田舎町でした。しかし、彼はスマートフォンを持っていました。田舎ですが通信環境は整っていて、彼は安い給与でもスマートフォンを自己投資として購入し、情報を得ていました。
海外の人材を雇いたいと思いはじめたのは、今から5年ほど前です。そこで、鳥養さんがすでにミャンマーを開拓されていたのでお願いすることにしました。鳥養さんが現地での採用に携わってくれたので、大きく踏み出せたと思います。
また、ミャンマーは国民性が日本に似ていて、勤勉だと伺っていたのもあります。そこで、120名くらいの応募の中から6名ほどに絞りました。さらに現地でCADの操作テストをして、採用する人材を決定しました。
金重様:鳥養さんのネットワークやノウハウにとても助けられましたね。技術的なことで協力できることがあれば、ぜひ一緒に何かやれたらと思っています。
加賀屋様:さらにここで終わりではなく、向こうでナンバーワンを目指していきたいです。

現地の人材にはOJTをしながら次の実務に活かす

加賀屋様:CADを扱えても、角度設定や線の書き方などに雑さが目立ち、のちに3Dにする時に上手くいかないことがあります。そのような細かい部分をしっかりできるよう、初めのうちから教えています。教えないと、人材が育たないまま、この事業は失敗してしまうと感じます。
具体的には、こちらが指摘した点と改善点を、すべてメモするように言っています。また今後、人に教える時にはそのメモを見せるようにと伝えています。
金重様:日本語のマニュアルを現地で英語に変えてもらったりもしますね。
加賀屋様:設計のネタを出してもらって、一緒にデータを作る流れです。

CAD技術より図面の読解力の向上に時間がかかる

加賀屋様:土木業界は範囲が広く、防災のための堤防や橋、下水道など図が異なります。そのため、図面を見て何が書いてあるのかを読み解く力が必要です。CAD自体は1~2週間もあればできるようになりますが、図面が読めるようになるまでには、2~3ヵ月はかかります。また、現地に実際ないものやスタッフが見たことのないものはイメージが沸きにくい、という難しさがあります。その場合は、設計図を見せて説明したり、画像検索やストリートビューで位置を見てもらったりすることもあります。

7.当サービス利用によるメリットや今後について

現地の技術的なサポートを任せられる安心感

加賀屋様:これから発展していく国の人材は、将来海外を渡り歩きたい、自分の国で成功したいという意欲がある人が多い印象です。当サービスでは、そのような意欲の高い現地のスタッフが対応してくれる点が大きいですね。また、もし自分がお客様だとしたら、海外スタッフが対応すると聞いた時、品質面で多少不安に感じます。しかし日本の企業(ノシクミ)が責任をもって技術的なサポートや現地の労務管理をしているならば、信頼が高まります。
金重様:海外の人に関わることや教えるということが、会社や社員にとっても良い影響があると感じます。今までは日本人同士で、さらに日本の仕組みとして判子ひとつでも実際に会って押す、というのが通常でした。しかし、テレワークのような環境でも正確に伝えて成果を出すという経験ができています。これは、社員の成長にとっても良いのではと日々思います。

当社に期待することや今後の展望

金重様:さらにスタッフを増やした時、現地スタッフがマネジメント層になったとき、マネジメントに関するノウハウをお教えいただければ。そうすれば、ピラミッドのようにできるのではと思います。
加賀屋様:今後はミャンマーでナンバーワンの会社にしていきたいです。今後は5名ほど、現地のスタッフを入れたいと考えています。
金重様:2Dありきでやる日本と違って、3Dありきで物事をやれる仕組みやりたいです。するとミャンマーの発展も早いのではないのではと思います。
加賀屋様:金重社長が3次元設計を現地のスタッフに教えるという(笑)。
金重様:そうですね、そういったものも含めてやれたら楽しいですね。
加賀屋様:そうして現地でのピラミッドをもう一段増やしたいですね。

株式会社デバイスワークス 様 会社概要

本社所在地:
〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町2-14-7 日本橋テイユービル1F
設立日: 2006年5月10日
事業内容:
三次元データ作成・BIM/CIMコンサルティング・教育
URL:https://www.deviceworks.jp

株式会社ラグロフ設計工房 様 会社概要

本社所在地:
〒700-080 岡山市北区広瀬町3-3 島本ビル502
設立日:2009 年8月24 日
事業内容:防災事業(河川・砂防・道路)に係る計画・調査・設計・施工計画
URL:http://www.lagrof.jp/